「ライブハウスとバンド運営について考えてみた」
どうもTenohilamp(@Tenohilamp)です。
先日から一部で話題になっている海保けんたろーさんの記事を読んでから
個人的にも色々考えてみたので、まとめてみたいと思う。
長文になってしまったけれども。
まずは海保さんの記事を読んでいただきたい。
要点
賛成・反対色々な意見が出ているようだが、
自分自身は、ざっくりまとめると以下のような主張だと捉えている。
■ライブハウスにまつわる不満
- チケットを買って聞きに来た客へのサービスレベルが低い(スタッフの態度・分煙・飲食に関する不満)
- 集客の努力を出演者にほぼ丸投げしている
⇒ チケットノルマという形でバンドからお金を得ているので、ライブハウス側は商売として一応成立している
■チケットノルマ以下しか動員できないバンドがライブをやめると解決する
- 出演者が減るとライブハウス側の収入がなくなる
- 立地・音・サービスレベルが低いライブハウスが潰れる
- ライブハウスが減ると、ライブハウスで演奏可能なバンドは、自力で集客可能なレベルのバンドに限られる
- 出演者が自力で集客できるため、チケットノルマの制度が不要になる
- サービスが高く・演奏者のレベルの高いライブハウスだけが生き残っているので、ふらっと立ち寄ろうという客も増えてくる
疑問点
前提として、問題提起としてはとても素晴らしいと思うし、
最初は手放しで賛成しかけたが、よく考えると疑問点が湧いてくる。
偉そうにダメ出ししているように見えるかもしれないが、
マウントを取ってぶん殴ってやろうとかそんな意図は一切ないので、悪しからず。
話の流れが繋がっていないのでは?
最初に解決後の理想の姿が提示されておらず、
最初に問題点として挙げられていることの何が問題なのかが分かりにくく、
結果として、何故解決しなければならないのかが分かりにくい。
出演者側に出演の辞退を促す話がメインになっているので、
バンドマンに対する何か提案の話かと思って読むと、
ライブハウスの生存競争の話や、
ライブハウスに客が立ち寄りやすくなる、という話になっており、
「ライブハウスを、客が立ち寄りやすい場所にするにはどうすれば良いか」
という話に変わっていて、複数の主張が展開されているように感じ、混乱する。
主張としては、2つの話が展開されていると捉えている。
主張①
ライブハウスに、客が音楽を求めて気軽に訪れることができる状況になって欲しい。
主張①に関する問題点
- ライブハウスのサービスレベルが低い
- ライブハウスの集客に対する努力がほぼない
- 集客力が低いバンドでも、ライブハウスに金を払えばライブが出来る。
主張②
集客ができないバンドは、無駄に体力を減らすのをやめて、効率を考えて欲しい
主張②に関する問題点
- 聴く人がいないのに、数万円の金を払ってまでライブハウスに出演する価値があるのか
主張②に関しては、別途提示されるそうだが、
集客の効率化を図るための、バンド運営方法を提案すれば良いと思われる。
ライブハウスが淘汰されることによるバンド側のメリットも提示されていないので、
解決案としては適さないように思う。
(2017/5/17 追記)
自力宣伝の方法についての記事が更新されましたので、リンクを追加しておきます。
論理に飛躍がないだろうか?
主張①の解決の流れとしては、以下のようになっている。
- 自力集客ができないバンドが出演を控える。
- 立地・サービスレベルが低いライブハウスは淘汰される。
- サービスレベルが高く、自力集客可能なバンドが出演するライブハウスが残る。
- 自力集客可能なバンドが出演するのでチケットノルマ制が不要になる
- ふらっとライブハウスに立ち寄る客が増える
疑問なのは、3以降である。
3については、
残って欲しいと想定されているライブハウスだけが、
都合よく残ることが出来るのだろうかという疑問である。
小規模の体力のないライブハウスから淘汰されていくと思われるが、
そうすると、残るのは中・大規模のライブハウスとなり、
その会場を抑えようとすると、必要な会場代・スタッフ人数など、
かかる経費が上がっていき、バンド側が収益を上げるのに必要な集客人数も多くなる。
果たしてそこまで辿りつけるバンドがどれだけいるのか。
結果、ライブハウスに出演できるバンド数自体が減り、
中・大規模のライブハウスですら潰れていくのではなかろうか。
小規模ライブハウスが全滅する訳でもなくて、
バランスよくライブハウスが残っていくから問題ない、
ということになれば良いが。
4については、
チケットノルマ制が無くなったらライブハウスは何を収入源にしていくのだろう、という点が疑問である。
チケットノルマ制は、ライブハウスという空間を利用するためのサービス料なので、
バンド側が自力集客出来るかどうかに関係なく、必要経費としてバンド側が支払う必要があるのではなかろうか。
チケット代はバンド側の収入源だろうから、
そこを奪うと今度はバンド側が立ちいかなくなる。
5については、
そもそも「サービスレベルが高く、自力集客ができる出演者が集まっている場所」があれば、
そこに音楽を聴きに行こうとなるのか、という点が疑問である。
音楽が無くても生きていける人も多い。
サービスレベルが高いのであれば、店側のコストも高くなり、
客側にかかる負担も大きくなると思われる。
負担が大きいと、気軽に訪れる場所にはならないのではないか。
結局、好きなアーティストが出演するタイミングでしか訪れることはないのではないか。
また、「自力集客で出来る出演者」の情報がネットにないことは、ほぼありえない。
知らない音楽を探そうと思えばネットで探せる時代に、
知らない音楽を探すという目的でライブハウスを訪れる人が増えていくだろうか。
例えば、質の高いサービスが受けられるという信頼が既にあるライブハウスがあったとして、
スケジュールを確認し、出演アーティストの情報を探し、
気に入ったアーティストがいれば行ってみよう、
という探し方もあるかもしれないが、手間がかかりすぎる。
客が「気軽に」訪れるということを優先するのであれば、
何か別のものを用意して、そこに絡めて、
音楽はついでに聞けるという形でないと難しいのではないかと思う。
雑感
他にも色々考えたので、それぞれ書いておきたい。
「チケットノルマ制」は悪いことなのか
元記事では、問題点として挙げられていたが、
上でも疑問点として記載した通り、本当に問題なのだろうか。
ライブハウスは、場所・音響・照明を提供することをメインとしているので、
メインの客はバンドである。
バンドに対して出演しませんかとブッキングをしてくるのは、
ライブハウスからすると営業活動にあたり、
バンドは、ライブハウス側に出演させてくれと依頼している立場となる。
バンドは、ライブハウスに場所やスタッフを借りてライブを行っているということになるので、
バンドからライブハウスへ、レンタルサービスに対する支払を行う必要がある。
聴きに来た客のチケット代は、ライブハウスが一旦受け取るが、
最終的にはバンド側に入るので、
サービス料(チケットノルマ) – チケット売上 の差額を支払っているということになる。
チケット売上の方が上回れば、差額はバンド側の収益となる。
何らおかしな点は見当たらないように思う。
むしろチケットを先に用意してくれているので、親切ですらあると感じる。
集客の話
ライブを見に来る客が入れば、
出演者は勿論嬉しいし、物販などでビジネス的にも可能性が広がる。
ライブハウス側も同様に、飲食やその他サービスでビジネスとしての可能性がある筈。
そのため、集客に関しては、
「ライブハウス側が協力」というのがそもそもおかしい話で、
客が入るための努力は双方行うべきだと思う。
(金持ちがライブハウスを道楽でやっている、ライブハウスはサイドビジネスなので、
集客に積極的でないという場合は話が異なる)
集客に対して、何もしないライブハウスについては、
バンド側から見ると、自分達の集客の可能性が落ちる訳で、
そのライブハウスを敬遠しても仕方がなく、
集客のための努力をしているライブハウスの方へ流れることになる。
しかし、現状では、どこがそういう努力をしているライブハウスなのか外から見えないので、
バンド側が選べていないのではないか。
結果として、集客の努力をしているライブハウスと努力していないライブハウスとで、
差が発生しないという状況なのではなかろうか。
まずは、バンド側が、各ライブハウスの特性を把握した上で
キチンと選ぶところから始めないといけないかもしれない。
そして、ライブハウス側は、
自分達のビジネスチャンスを広げるという点と、
客であるバンドへのアピールという点で、
集客のための何かしらのアクションを取る必要があると同時に、
そのアクションが、一般客やバンドから見て分かりやすくなっている必要がある。
ただ、勘違いしないようにしたいのは、
集客のために採用可能な方法が、バンド側とライブハウス側とでは異なる。
バンド側は自分だけの宣伝活動を行えば良いが、
ライブハウスに宣伝専用の部署やスタッフがいるならまだしも、
小規模ライブハウスに各バンドの宣伝を行えというのは無理がある。
日次単位でも難しいのかどうかまでは分からないが。
しかし、せめて、開催されるのがどういうイベントなのか、
どういった出演者が出るのかを発信するくらいはしても良そうだし、
発信する内容やどこに発信するのかを決めるために出演者と打ち合わせをしたり、
宣伝のための作業を一緒に行うことがあっても良いと思う。
必要ならば、当日に初めて会うのではなく、
事前に出演者同士やスタッフが会う機会を作っても良いのではないか。
それくらい既にやっているというライブハウスもあるかもしれないが、
少なくとも自分が過去に出演したライブハウスはそんなことは無かった。
ここまで書いて、宣伝専門の仕事をする人が現れても良さそうだなと思ったが、
それがレコード会社の広報担当か。
騒音問題
常々疑問だったのだが、何故ロックバンドは爆音で演奏したがるのか。
その音量だとカフェでの演奏も厳しくないかと。
場所にあった音量で演奏する、または、
場所にあった音量でしか演奏できないように
機材を調整することを心がければ、
多少は場所の問題も解消されるのではないか。
最近は、ギターアンプにW数調整で
音色はそのままに音量だけ下げることが可能なものもあるし、
ドラムの場合は、演奏方法から見直しが必要だが、
小口径のものを使ったり、ミュートを駆使するなどすれば
いくらか軽減されはしないのだろうか。
あとは、小さな音量でも演奏出来る曲を作ったり、
小さな音量でも映える演出を考えたりした方が良いとしか言えないが。
長い目で演奏に触れることを一般的にしていく必要がある
街の風景として溶け込ませたいのだとしたら、
どんな人でも演奏しても良いし、いつでも聴きに行って良いのだ
という土壌が必要である。
現状は、良くも悪くも、非日常感を味わうことがライブへ行く目的になっている。
テレビで演奏している人達は、顔が整っていたり、服装がキラキラしていたり、
何かしら非日常を思わせる要素がある。
客側にしても、そういう人達を見に行くのだという気合が入っている。
夢を見せるという点においては良いことだが、
現実に根付かせようという場合においては、障害になるのではないかと思う。
家でピアノを弾く、小学校でリコーダーを吹く等の
子供の頃からの日常の延長に、
街で近所の友達や隣の家のお父さんが演奏している、
くらいの日常感がないと、文化として浸透するところまでいかないように思う。
本気で考えるのだとしたら、
業界全体で文化を普及していくための活動を行う必要があるように思う。
腐敗しないでかい組織と金と人数が必要そうだなぁ・・・・
自発的にそういう方向に持っていけないもんだろうか。
それでは、今回はこの辺りで。
また、次回お会いできることを願って。